上毛新聞 掲載コラム「視点」

第1回 介護と高齢化 若い担い手の育成急げ

 作曲家・吉田正先生の門下生となり、以来私の歌手生活も今年で35年を迎えました。この間、これといった病気もせず歌い続けてこられたのも、健康な体に産んでくれた両親、そして陰になり日なたとなってお力添えを頂いた支援者の皆さま、ファンの皆さまのお陰と、心より感謝の気持ちでいっばいです。

私は小さいころに両親を亡くし、経済的に大変厳しい少女時代を過ごしました。小学校時代は鉛筆、クレヨン、ノートなどにも不自由しました。ある時、先生が見るに見かねたのか、たくさんの学用品をプレゼントしてくれました。その中でもセルロイドのお裁縫箱は、ボコボコになった今でも使用しており、私の宝物です。それが福祉事務所からのプレゼントであったことを後から知りました。そのお返しの意味で、現在、私は歌手活動の傍らライフワークの一つとして、福祉活動に力を入れております。

代表的なのがチャリティーゴルフ大会で、今年で12年目を迎えました。お陰さまでこの間に介護用自動車(福祉号)4台、擁護用ベッド80台、車いす約100台、そのほか義援金などを寄贈することができました。これも、私の趣旨に賛同してくださった多くの皆さま、お一人おひとりの温かい心とご理解のたまものであると、心より感謝しております。今はふるさと群馬が中心ですが、私の気持ちとしては、今後これを全国的に展開していきたいと思っております。

当然ながら、福祉の現場を垣間見る機会が多くなり、最近特に感じることが一つあります。それは、介護をしている方々の高齢化がかなり進んでいるのではないか、ということです。ちなみに少し調べてみますと、60歳以上の介護者が50%以上を占め、70歳を超えた人も20%以上となっています。「高齢者が高齢者を介護する」という現実、これで果たして満足のいく介護ができるのでしょうか。

21世紀のわが国は「高齢化、少子化、人口減少の世紀」といわれています。平成62年には、3人に1人が65歳以上という「超高齢化社会」の到来が予測されています。そのためでしょうか、各施設の建設は一段と拍車がかかっており、また社会資本の充実も着々と進んでいます。私がここであえて申し上げたいことは、「仏つくって魂を入れず」という諺(ことわざ)がありますように、器ももちろん大事ですが、その中身、すなわち福祉の担い手となる「若い人材の確保と育成」が急務であると思います。同時に若い人たちも、もっともっと福祉に関心を持って、積極的に取り組んでほしいと思います。将来の福祉社会に備えて、今こそ若い人の参加が求められている時ではないでしょうか。
今、国の支援の下で、地方自治体、各種団体等がさまざまな対策を計画・整備し、実行しつつあるとうかがっております。関係者の、今後なお一層のご努力を期待申し上げます。

古都 清乃

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